一級品ほど自然に回帰する、『山地酪農家 中洞正の生きる力』


今週の『ビジネス発想源』で取り上げた本は、従来の乳牛の密飼いによる酪農法ではなく極めて自然に近い山地酪農を確立している、岩手県のなかほら牧場の牧場長・中洞正氏の著作『山地酪農家 中洞正の生きる力』です。

今、一般的なスーパーでよく見る牛乳というのは、乳牛を牛舎の区画に閉じ込めロボット的に搾乳していく工業産品なんだそうですね。また牛乳は国内自給率がほぼ100%と言いながら実際には飼料の輸入率がほぼ100%だとか、現代の酪農のビジネスモデルはかなり限界が来ていることがよく分かります。外国人が日本の料理や食品を褒める中、日本の牛乳だけはマズイと思うんだとか。

そんな中で、なかほら牧場は山地酪農という、牛舎もなければサイロもない自然の摂理に従った酪農法で牛を育てています。山地酪農だと、たとえ牧場が雪に覆われても牛は大丈夫で、子牛の出産も自然にどこかで行われていて人間が手を貸す必要がなく、また蹄を切る必要もないんだそうです。斜面でも全然大丈夫で、狭い日本の国土ではこちらのほうが絶対に相性がよさそう。

この本を読んだきっかけは、銀座松屋に700ml1,000円ぐらいの高い瓶詰めの牛乳が売っていて、興味本位で買ってみたこと。それがなかほら牧場の牛乳だったんですが、あまりに美味しくて子供たちもがんがん飲むので、もっと興味が湧いてきて、牧場長の本があると知ってすぐ読みました。

読んでいるうちに、酪農だけではなく農業も漁業もあらゆる一次産業がかなり行き詰まっている状態になっていて、それは業者も悪いが安さだけに釣られる消費者にも責任があるなあ……、などといろいろと考えさせられました。


『山地酪農家 中洞正の生きる力』(中洞正氏著/六耀社)


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