永き栄華を築く懐刀役の生き様、『猛き黄金の国 柳生宗矩』


本宮ひろ志の漫画『猛き黄金の国 柳生宗矩』を読みました。
「猛き黄金の国」シリーズは本宮作品の中でも個人的にものすごーく好きな作品で、
第1作では岩崎弥太郎が主人公で、土佐の武士の身から坂本龍馬らと共に長崎で名を成し、
三菱財閥を築き上げて明治以降の民間企業の道を切り拓く様子を描いています。
第2作では美濃の戦国大名・斎藤道三が主人公で、武士の身分から油商人の主人となり、
その楽市楽座の自由経済の考え方が、娘婿の織田信長に継承されていく様子が描かれています。
つまり「時代を経済の視点から描く」のが『猛き黄金の国』シリーズの醍醐味であり、
第3作である『柳生宗矩』は、なんでまた剣豪なんか話にしちゃったんだろ…
と「ビジネスジャンプ」の連載時には2話ぐらい読んで挫折してたんです。
で、今回単行本で全話を通して読むと、ただの剣豪の話ではなく、
創業したばかりで不安定の江戸幕府という組織を、
何百年にも及ぶ栄華を続けるための強力な組織へと固めていくために、
陰の功労者として政治をしていく、いわゆる社内政治家のような話でした。
大きな組織のナンバー2はいかにあるべきか、といった視点の話だったのです。
最終話では、幕末の坂本龍馬が勝海舟から柳生宗矩の名前を聞いて、
つい柳生宗矩の墓を参る、というシーンで終わります。
まさに第1作に連結しているかのような終わり方だったので、
『猛き黄金の国』シリーズ全体を引き締めるような作品に思えました。
面白かったです!


『猛き黄金の国 柳生宗矩』(作・本宮ひろ志)


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